陰影ができるまでの、静かな時間

陰影ができるまでの、静かな時間

作品づくりは、思っている以上に「待つ」時間でできています。

石膏や下地材をベースにテクスチャーを重ねていく工程は、一度に仕上げることができません。

一層重ねては乾かし、表面を研磨し、また重ねる。

その繰り返しの中で、少しずつ陰影の深さが生まれていきます。急ぐと、どうしても質感が浅くなってしまう。

だからこそ、乾燥にかかる時間をそのまま受け入れることが、制作の一部になっています。

 

ドレープシリーズの作品には、完成までおよそ一ヶ月を要するものもあります。

布のようなやわらかな陰影を下地材で表現するには、何度も手を止めて、光の当たり方を確認する時間が必要だからです。

同じ角度から見ても、朝と夕方では表情がまったく違う。その変化を計算しながらも、最後は手の感覚を信じて仕上げています。

研磨の工程では、なめらかさと質感のバランスを何度も調整します。滑らかすぎると陰影が消え、粗すぎると重たくなる。ちょうどいい「間」を探る作業は、正直なところ、今でも毎回悩みます。

 

一点ものというのは、こうした時間の積み重ねの結果でもあります。

同じ工程を踏んでいても、二つと同じ表情は生まれません。

それもまた、手仕事の面白さだと感じています。

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