JOURNAL

Story of "Mineral Flow|Fluid Art|F20"

Story of "Mineral Flow|Fluid Art|F20"

"ダイナミック!" 完成した作品を前にして、まず口をついて出た言葉でした。 銀色に輝く鉱物のような質感、大胆に走るクラッキング、その迫力に私自身、圧倒されました。   フルイドアートと言っても、私の制作方法は我流。一般的によく目にする、美しい流動やマーブル模様のフルイドアートとは、少し違う表情を見せるのかもしれません。   常に流れ変わる表情を見極めながら乾燥させますが、完全に乾いた後では、途中とはまったく異なる顔を見せます。 それは時に"失敗"のように見えて、そのまま終わらせず、またその上から層を重ねていく。こうして完成までにいくつもの歴史が積み重なった一枚には、フルイドアートのコンセプトとしている「過去・歴史」が自然と刻まれていくのです。   制作中には、クラッキングの表情はまだ現れません。乾燥してはじめて、ひび割れが姿を見せる。だから完成するまでは楽しみであり、同時に毎回、緊張する瞬間でもあります。乾いていく過程を見守りながら、「今回はどんな表情になるだろう」と、期待と不安が入り混じるのです。   特にこの一枚は、全体にわたって大胆にクラッキングが入りました。乾燥後の仕上がりを見て圧倒されたのは、まさにそのためです。 大胆でありながらも、奥ゆかしさと品を添える煌めき——それは、まるで鉱物のような佇まい。 だからこの作品を、"Mineral Flow" と名付けました。   "Mineral Flow|Fluid Art|F20"  

Story of "Mineral Flow|Fluid Art|F20"

"ダイナミック!" 完成した作品を前にして、まず口をついて出た言葉でした。 銀色に輝く鉱物のような質感、大胆に走るクラッキング、その迫力に私自身、圧倒されました。   フルイドアートと言っても、私の制作方法は我流。一般的によく目にする、美しい流動やマーブル模様のフルイドアートとは、少し違う表情を見せるのかもしれません。   常に流れ変わる表情を見極めながら乾燥させますが、完全に乾いた後では、途中とはまったく異なる顔を見せます。 それは時に"失敗"のように見えて、そのまま終わらせず、またその上から層を重ねていく。こうして完成までにいくつもの歴史が積み重なった一枚には、フルイドアートのコンセプトとしている「過去・歴史」が自然と刻まれていくのです。   制作中には、クラッキングの表情はまだ現れません。乾燥してはじめて、ひび割れが姿を見せる。だから完成するまでは楽しみであり、同時に毎回、緊張する瞬間でもあります。乾いていく過程を見守りながら、「今回はどんな表情になるだろう」と、期待と不安が入り混じるのです。   特にこの一枚は、全体にわたって大胆にクラッキングが入りました。乾燥後の仕上がりを見て圧倒されたのは、まさにそのためです。 大胆でありながらも、奥ゆかしさと品を添える煌めき——それは、まるで鉱物のような佇まい。 だからこの作品を、"Mineral Flow" と名付けました。   "Mineral Flow|Fluid Art|F20"  

なぜ、白なのか。

なぜ、白なのか。

よく尋ねられることがあります。「なぜ、白なの」と。 私の作品の多くは、白を基調にしています。 白は、何にでもなれる色。 白は、リセットの色。 そして、自分の心と静かに向き合うための色。 静寂の白に刻まれる陰影は、 時間の移ろいとともに表情を変えながら、 ゆっくりと心をほどいてくれる、そう信じているからです。   色を足すことは簡単です。 だけど、色を持たないことで初めて見えてくる陰影がある。白であることは、何かを削ぎ落とした結果ではなく、光と影がもっとも雄弁に語れる場所を選んだ、という感覚に近いかもしれません。 この先も、白を基調とした作品をつくり続けると思います。それは、見る方一人ひとりが、自分自身の心と静かに向き合える余白を、白の中に見つけてもらいたいからです。

なぜ、白なのか。

よく尋ねられることがあります。「なぜ、白なの」と。 私の作品の多くは、白を基調にしています。 白は、何にでもなれる色。 白は、リセットの色。 そして、自分の心と静かに向き合うための色。 静寂の白に刻まれる陰影は、 時間の移ろいとともに表情を変えながら、 ゆっくりと心をほどいてくれる、そう信じているからです。   色を足すことは簡単です。 だけど、色を持たないことで初めて見えてくる陰影がある。白であることは、何かを削ぎ落とした結果ではなく、光と影がもっとも雄弁に語れる場所を選んだ、という感覚に近いかもしれません。 この先も、白を基調とした作品をつくり続けると思います。それは、見る方一人ひとりが、自分自身の心と静かに向き合える余白を、白の中に見つけてもらいたいからです。

過去・現在・未来 — 三つの時間をかたちにする

過去・現在・未来 — 三つの時間をかたちにする

作品を3つのシリーズに分けているのは、単なる分類のためではありません。それぞれが、異なる時間の感覚を表現しているからです。 Drape Artは「現在」を表すシリーズです。やわらかな陰影が特徴で、慌ただしい日々の中でふと立ち止まり、今この瞬間の自分と向き合うための作品を目指しています。布がまとう陰影のように、心を静かにリセットしてくれる存在でありたいと思っています。 Fluid Artは「過去」を表すシリーズです。地層や鉱物を思わせる凹凸のある質感と、マットな静けさの中にきらめきを宿しています。積み重ねてきた記憶や感情、自分自身の歴史を、懐かしさとあたたかさをたたえながら見つめ直すための作品です。 Textured Artは「未来」を表すシリーズです。神秘性と、計算された美しさを併せ持つ質感を通して、まだ見ぬ景色への感覚をかたちにしています。静かな緊張感の中に、これから開かれていく可能性を込めています。 3つの時間は、どれも独立しているようで、実はつながっています。過去を見つめることで今が形づくられ、今を大切にすることで未来への感覚が開かれていく。作品を通して、そんな時間の重なりを、見る方の内面にそっと届けられたらと思っています。 どのシリーズも、光の当たり方や時間帯によって表情を変えます。ぜひ、実際に空間に置いていただき、その変化を味わっていただけたら嬉しいです。

過去・現在・未来 — 三つの時間をかたちにする

作品を3つのシリーズに分けているのは、単なる分類のためではありません。それぞれが、異なる時間の感覚を表現しているからです。 Drape Artは「現在」を表すシリーズです。やわらかな陰影が特徴で、慌ただしい日々の中でふと立ち止まり、今この瞬間の自分と向き合うための作品を目指しています。布がまとう陰影のように、心を静かにリセットしてくれる存在でありたいと思っています。 Fluid Artは「過去」を表すシリーズです。地層や鉱物を思わせる凹凸のある質感と、マットな静けさの中にきらめきを宿しています。積み重ねてきた記憶や感情、自分自身の歴史を、懐かしさとあたたかさをたたえながら見つめ直すための作品です。 Textured Artは「未来」を表すシリーズです。神秘性と、計算された美しさを併せ持つ質感を通して、まだ見ぬ景色への感覚をかたちにしています。静かな緊張感の中に、これから開かれていく可能性を込めています。 3つの時間は、どれも独立しているようで、実はつながっています。過去を見つめることで今が形づくられ、今を大切にすることで未来への感覚が開かれていく。作品を通して、そんな時間の重なりを、見る方の内面にそっと届けられたらと思っています。 どのシリーズも、光の当たり方や時間帯によって表情を変えます。ぜひ、実際に空間に置いていただき、その変化を味わっていただけたら嬉しいです。

陰影ができるまでの、静かな時間

陰影ができるまでの、静かな時間

作品づくりは、思っている以上に「待つ」時間でできています。 石膏や下地材をベースにテクスチャーを重ねていく工程は、一度に仕上げることができません。 一層重ねては乾かし、表面を研磨し、また重ねる。 その繰り返しの中で、少しずつ陰影の深さが生まれていきます。急ぐと、どうしても質感が浅くなってしまう。 だからこそ、乾燥にかかる時間をそのまま受け入れることが、制作の一部になっています。   ドレープシリーズの作品には、完成までおよそ一ヶ月を要するものもあります。 布のようなやわらかな陰影を下地材で表現するには、何度も手を止めて、光の当たり方を確認する時間が必要だからです。 同じ角度から見ても、朝と夕方では表情がまったく違う。その変化を計算しながらも、最後は手の感覚を信じて仕上げています。 研磨の工程では、なめらかさと質感のバランスを何度も調整します。滑らかすぎると陰影が消え、粗すぎると重たくなる。ちょうどいい「間」を探る作業は、正直なところ、今でも毎回悩みます。   一点ものというのは、こうした時間の積み重ねの結果でもあります。 同じ工程を踏んでいても、二つと同じ表情は生まれません。 それもまた、手仕事の面白さだと感じています。

陰影ができるまでの、静かな時間

作品づくりは、思っている以上に「待つ」時間でできています。 石膏や下地材をベースにテクスチャーを重ねていく工程は、一度に仕上げることができません。 一層重ねては乾かし、表面を研磨し、また重ねる。 その繰り返しの中で、少しずつ陰影の深さが生まれていきます。急ぐと、どうしても質感が浅くなってしまう。 だからこそ、乾燥にかかる時間をそのまま受け入れることが、制作の一部になっています。   ドレープシリーズの作品には、完成までおよそ一ヶ月を要するものもあります。 布のようなやわらかな陰影を下地材で表現するには、何度も手を止めて、光の当たり方を確認する時間が必要だからです。 同じ角度から見ても、朝と夕方では表情がまったく違う。その変化を計算しながらも、最後は手の感覚を信じて仕上げています。 研磨の工程では、なめらかさと質感のバランスを何度も調整します。滑らかすぎると陰影が消え、粗すぎると重たくなる。ちょうどいい「間」を探る作業は、正直なところ、今でも毎回悩みます。   一点ものというのは、こうした時間の積み重ねの結果でもあります。 同じ工程を踏んでいても、二つと同じ表情は生まれません。 それもまた、手仕事の面白さだと感じています。

光と陰影が、教えてくれたこと

光と陰影が、教えてくれたこと

造形美術を学んでいた頃、わたしはずっと「形」ばかりを追いかけていました。正しいバランス、美しい輪郭。だけど、ある時気づいたのです。本当に心を動かすのは、形そのものではなく、そこに落ちる光と影なのだと。 その後、ブライダルフラワーの仕事に携わる時間がありました。一輪の花が、光の角度ひとつで表情を変える瞬間に、何度も立ち会いました。空間の中で「生きているもの」がどう呼吸するか。その感覚は、今の作品づくりの土台になっています。 オーストラリアで暮らした期間も、大きな転機でした。日常の中に自然とアートが溶け込んでいる感覚、飾ることを特別視しない生活の豊かさ。帰国してからも、その感覚はずっとわたしの中に残っています。 育児の時間を経て、再び創作に向き合ったとき、以前とは違う視点で光と影を見つめている自分がいました。慌ただしい日々の中でこそ、静けさを持つものが必要なのだと。 2026年の春、作家活動を専業とすることを決めました。まだ始まったばかりですが、この場所で、制作の記録や作品に込めた想いを、少しずつ綴っていきたいと思います。

光と陰影が、教えてくれたこと

造形美術を学んでいた頃、わたしはずっと「形」ばかりを追いかけていました。正しいバランス、美しい輪郭。だけど、ある時気づいたのです。本当に心を動かすのは、形そのものではなく、そこに落ちる光と影なのだと。 その後、ブライダルフラワーの仕事に携わる時間がありました。一輪の花が、光の角度ひとつで表情を変える瞬間に、何度も立ち会いました。空間の中で「生きているもの」がどう呼吸するか。その感覚は、今の作品づくりの土台になっています。 オーストラリアで暮らした期間も、大きな転機でした。日常の中に自然とアートが溶け込んでいる感覚、飾ることを特別視しない生活の豊かさ。帰国してからも、その感覚はずっとわたしの中に残っています。 育児の時間を経て、再び創作に向き合ったとき、以前とは違う視点で光と影を見つめている自分がいました。慌ただしい日々の中でこそ、静けさを持つものが必要なのだと。 2026年の春、作家活動を専業とすることを決めました。まだ始まったばかりですが、この場所で、制作の記録や作品に込めた想いを、少しずつ綴っていきたいと思います。